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相田裕の青春恋愛群像劇『1518! イチゴ―イチハチ!』レビュー。

【多彩なキャラクターが演じる青春群像劇】

「俺は考えてたんだ… 春に会長と鳥谷が対決したとき、おれは突っ立って見てた。 これで…このままでいいのかって。 リレーを走るのはおれの冒険なのだ。」

 『GUNSLINGER GIRL』の相田裕が描く青春群像劇『1518! イチゴ―イチハチ!』の最新刊を読み上げました。

 前作『GUNSLINGER GIRL』は血と硝煙の匂いがただようような傑作でしたが、この『1518!』では一転して現代日本の、ある意味ではありふれた学園生活が描写されていきます。

 主人公は各部活動の「裏方」の仕事を手がける生徒会の面々。

 かれらが、格別に面白いことがあるわけではなく、人の注目を浴びることもない地味な仕事に喜びを見いだしていく様が淡々と描かれるのです。

 ある意味ではこれ以上ないくらい地味な作品ですが、現代日本のひとつの生活のあり方を活写しているという意味で、きわめて現代的な物語だとも思います。

 かつてのバブル期のように派手な文化ではなくなり、上昇志向も少なくなったこの日本で、どのようにして日々の暮らしを楽しんでいくかというテーマがここにあるように思えるのですね。

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【成長か、成熟か】

 「裏方」が主人公であるだけに、どうしても派手にはならない作品ではあるのだけれど、その分、描写の丁寧さは傑出しています。

 ある理由で「ヒーロー」であることを奪われた少年を中心に描かれる「成長」ではなく「成熟」を軸にした展開には、いまを生きるぼくたちは学ぶべきところが多いでしょう。

 じっさい、いまの日本では「まっすぐ成長すること」だけを目指して生きることはかなり辛い。

 国も人もあたりまえの日々を淡々と生きていくことに喜びを見いだせるくらい「成熟」していかなければならない時期に来ているのだと考えます。

 そこにはどうしようもなく「喪失の痛み」がともなうかもしれないけれど、それでも少しずつ「痛み」を受け入れ、大人になっていくことが必要なのでしょう。

 現実にはそれは非常にむずかしいことではありますが。

【冒険へ乗り出す勇気】

 前巻では主人公たちの恋のゆくえにひとつの結論が出されたわけですが、物語はなおも続きます。

 この第6巻では、従来の物語の中心であったキャラクター以外のところに光があたり、物語世界がさらに拡大していく印象を受けます。

 この作品はいままで「喪失」や「挫折」がひとつのテーマになっていたわけですが、第6巻まで来るとその色合いも薄れ、相当に前向きになって来ている感じ。

 そこでキーワードになるのが「冒険」という言葉です。何か新しい扉を開いてみたり、苦手なことにチャレンジしてみたりすることは、人にとってひとつの冒険です。

 その冒険に乗り出すことができるかどうかで、人生は大きく変わっていくことでしょう。

 しかし、じっさいには人はなかなか冒険へ乗り出すことができません。人が冒険へ赴くためには、それなりの「勇気」が必要であり、そして、勇気を振り絞ることはほんとうに容易なことではないのです。

 つまりは、「ほんのちょっとした勇気」を出すことができるかどうかで、人生の内容は変化してくるということができるでしょうね。

 それがわかっていても、苦手なことを行うことは大変であることは間違いありませんが……。

 まあ、ぼくもだいぶ歳を取って臆病になっていますが、可能ならこれからも冒険に乗り出していきたいものだと感じます。無理かな。無理かもしれないけれど。

【恋の花が咲く】

 で、その一方で恋愛描写も豊かで、いやあ、素晴らしい。人を好きになるって良いことだとあらためて感じます。

 良いなあ、どうしてぼくはだれかを好きになったりできないのだろう。まあ、それはともかく、甘酸っぱい恋と青春の薫りが全編にただよい、何とも爽やかな物語が展開します。

 とはいえ、現実にはこういう爽やかな(「リア充」的な)青春を送れる人はそれほど多くはないだろうと思います。

 もっとつまらない青春を送っている人が大半なのではないかな。いや、それはぼくのひがみかもしれないけれど。

 あかるく楽しく青春ももちろん良いけれど、暗くてつまらない青春もそれはそれで価値があるのではないでしょうか。

 ただ、そう思うぼくのような人間でも、この『1518!』に描かれている高校生活を眺めているとうらやましく思ってしまうこともたしかで、つまりはそれくらいクオリティの高い作品に仕上がっているということです。

 ばくはつしろとはいわないけれど、良いなー、とは思う。ぼくもこんな人生を送りたかった。まあ、あまりにも勇気が足りなかったわけだけれど……。

 とにかく、最近のマンガのなかでは突出して出来が良い青春物語です。未読の方にはオススメです。

 たぶん、テーマ的なところに共振できなければ何が面白いのかまったくわからない作品かもしれないけれど、各登場人物が「喪失」を乗り越えてそれぞれの「冒険」へ挑むこの巻まで来ると、実にしみじみと良い味が出ています。

 オススメの作品のひとつ。ぜひ読んでみてくださいね。

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