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キズナアイはNHKにふさわしくない? 性差別か服装の自由か。

【キズナアイ騒動の発端】

バーチャルYouTuber業界の「親分」ことキズナアイがNHKのノーベル賞特設サイトに登場したことを巡って、ちょっとした騒ぎになっている。

騒動の発端は弁護士の太田啓子さんが10月2日に行ったツイート。

「NHKノーベル賞解説サイトでこのイラストを使う感覚を疑う」ということで、まあ、この人を知っている人にとっては「またいつものバッシングが始まったか」と思われる内容ではあったのだが、当然ながら反発も強く、賛否分かれて論争になっている。

個人的には、あまり発展的な議論には思えないのだが、「放置すればまたバッシングが続き表現が弾圧されてしまう」と考える層の危機感もわかる。

じっさい、過去にはそうやって「萌え絵」の表現が「性的」とラベリングされて抑圧されて来たのだから。

【萌え絵をバッシングする人たち】

 

それにしても、そもそもこういった「萌え絵」をことのほか嫌い、人権侵害であり性的搾取であると憤る人々は、ほんとうのところ、何を考えているのだろうか。

そもそも、仮にキズナアイが「性的に強調」されたデザインだとして、そのことの何が悪いのかぼくにはわからない。

半裸とか下着姿とかで出て来たというのならさすがに場にふさわしくないという考えも生まれるだろうが、そこまでの露出ではない。いったい何が問題なのだろうか。

思うに、この種のバッシングの背景には、いわゆる「萌え絵」というものが狭い層のオタク男性にのみ好まれているという偏見ないし事実誤認があるのではないだろうか。

たしかに、ある程度のエッジが効いた萌え絵は相当に狭い層に愛好されているに留まるだろうが、一方でキズナアイのYouTubeチャンネル登録者数は優に300万人を越す。

初音ミクがそうであるように、ごく狭いところでマニアックに認知されているようなキャラクターではないのだ。

当然ながら、ファンは男性だけではなく、相当数の女性もいる。また、よく知られているように、キズナアイのキャラクターデザインを手がけたのも女性である。

そして、「中の人」もとい声優を務めているのも、当然ながら女性だろう。それを「NHKにふさわしくない」と批判することは女性に対する差別ではないのだろうか。

【女性の権利のため?】

 

しかし、当人たちは女性の権利を守るためのことであり、萌え絵は女性蔑視であると主張しているわけなのである。このねじれ。この奇妙さ。

人間を描いたデザインは、ほとんどどのようなものであれ、性的に受け取ることはできるだろう。

しかし、それが「性的に見られること」を目的にしているということは、それとはべつの話である。

女性の乳房を強調したデザインは、多くの男性にとって性的に見えるだろう。だが、だからといってそれが「性的に見られるため」にそうしているとは限らない。

ここら辺、多くの男性が(そして女性も)カンチガイしているポイントである。女性が露出の高い格好をしていたからといって、それは性的に扱われることを容認しているわけではないのだ。

キズナアイを初め、萌え絵の女性像を批判する人たちは口々にいう。ここには女性の意思も、アイデンティティもまったく見て取れないと。

しかし、かれらはどういうわけか、女性が自分の意思で肉体を強調したファッションを身につけるということを考えてもみないようだ。

【好きな服を好きなように】

 

もちろん、女性が自分の肉体の美しさ、可愛さを強調したデザインを身にまとうということは、それだけで男性が女性を好きなように扱っていいという許可を出したことにはならない。

あたりまえだ。女性の肉体は女性のものである。女性は、それを好きに見せ、あるいは見せない権利がある。

彼女がいくらか肌を露出する格好をしていたとしても、男性はもちろん、ほかの女性にも文句を付けられる筋合いはない。ごく自然なことではないだろうか。

意外にも、男女を問わず「肌を露出した格好」、「可愛らしい格好」は知的な印象ではありえない、と考えている人がいまもって大勢いるようだ。

【「性的搾取」概念から自由に】

 

しかし、公共の空間で一人前に扱われるためには、「露出が多く可愛らしい格好」を身につけるという特権を捨てなければならないという発想こそ、女性を苦しめるものではないだろうか。

だれでも、好きな格好を好きなようにまとえば良いのである。

ぼくは男性だから正確に洞察できるわけではないが、かつての『美少女戦士セーラームーン』にしろ、いまの『プリキュア』にしろ、女性が女性的な格好を捨てずに(つまり、女性的な文化と価値観を捨てずに)そのままで戦うというところに魅力があるのではないかと思う。

もちろん、キズナアイ自身は特段に知的なキャラクターではないだろう。しかし、「可愛くて露出の高い格好をした知的な人物」だっていても良いし、じっさいにいるはずである。

それを一概に「性的搾取」と見ることは、それこそがまさに女性の身体の自由を侵害することのように思われてならない。

まあ、バーチャルYouTuberのような存在が理解されないのは、世代の分断でもあるのだろうけれど……。

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