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『プラネット・ウィズ』第11話ネタバレ感想「愛の進化とは?」。

 アニメ『プラネット・ウィズ』を第11話まで見終わった。次回は最終回だ。惑星シリウスを滅ぼした存在である「龍」との決着がどう語られるのか、注目である。

 この作品では、「正義」のためにシリウス人を虐殺した龍と、「愛の進化種族」の連合であるネビュラが対比的に描かれている。

 ここに、ぼくたちはどのようなテーマを見いだすべきだろうか。ぼくにはそれは明確であるように思われる。この世には、正義より大切なものがある、それは愛であり赦しだ、ということなのではないだろうか。

 この物語のなかで、龍により虐殺されたシリウス人の生きのこりである主人公は、初めは復讐心に駈られていたが、やがて龍を赦し、かれを解放しようとする。

 ここには、「赦すこと」を、人間の善性の象徴と見る視点がある。人間には、怒り、憎み、裁くことだけではなく、赦すことができる、それが人間の素晴らしさなのだ、といっているような気がするのだ。

 ひるがえって、現実世界を見よう。特にインターネットを見ていると、あまりにも正義が過剰なのではないか、とぼくには思える。

 そこにあるものは、自分を正義の具現だと盲信し、人を攻め、傷つけ、罵り、レッテルを張って差別する態度以外の何ものでもない。ぼくはそういう態度をいかにもくだらないと思う。それはまさに「愛の進化種族」にふさわしくない姿勢なのではないか。

 もちろん、ぼくたちがこの社会で生きていくためには何かしらの正義は不可欠だし、正義の価値を過小評価することはできない。しかし、正義とはつまり「裁き」の思想である。高みに立って人を裁くとき、人は何かを喪っているのではないだろうか。

 いうまでもなく、赦すことは簡単なことではない。怒りや憎しみに駈られて断罪の行動を取ることのほうがよほど楽だし、容易だろう。

 「水は低きに流れる」。人は安易な方向に流される。だから、愛の方向に進化することはそう簡単なことではない。

 「悪いのは他人だ」。「自分には何の問題もない」。そう思っていたほうがはるかに楽に生きられることは間違いない。ひとたび自分の弱さや愚かしさを自覚したなら、人はそう簡単に他人を裁くことはできなくなるのだから。

 しかし、それはやがて龍へ、虐殺者へと至る道だ。じっさい、20世紀には「正義の怒り」、「裁きの心」から始まった事件が少なくない。そこには、「愛」と「赦し」の精神が致命的に欠けているのだ。

 新約聖書によると、かつてイエスは「あなたがたのなかで罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」といったと伝えられている。

 その言葉を聞いた人々は、自分たちもまた無謬ではないことを思いだし、だれもその女を裁こうとしなかったといわれる。かれらは自分たちが決してイノセントではないありえないことを理解できるくらい聡明だったわけだ。

 しかし、現代においてはどうだろう。多くの人が自分たちの無謬を信じ切っているのではないだろうか。

 独善はなまじの悪よりも恐ろしい。人は自分が正義だと信じるとき、どこまでも暴力的になれるからだ。まさに龍がそうであったように。

 ただ自分の正義を信じ、高みから人を裁き、攻めたり、責めたりすることではなく、「もうひとつの道」を進むことこそが人間の正しい進化だと、『プラネット・ウィズ』はいっているように思える。

 しかし、はたしてぼくたちにそのようなことができるだろうか。いまの日本を見ると、人々はますます自分たちの正義を信じ、寛容であることを忘れ去っているように見える。

 無数の正義が乱立し、それぞれが互いの絶対価値を掲げて攻撃しあう、それは地獄の風景だ。ぼくにはそれが望ましい社会であるようには思えないのだが、どうだろうか。

 インターネットを見ると、10年前、20年前と比べてもはるかにギスギスしているように思えてならない。それは、正義があれば人を攻撃してもかまわないと考える人が増えたからかもしれない。

 ぼくはそのような方向の「進化」を忌まわしく思うものだ。しかし、それが人間の限界なのだろうか……。

 『プラネット・ウィズ』は何といっても1クールのアニメなので、「実際にはこんなふうには行かないだろう」と思うところもある。

 赦すことはそれほどまでにむずかしい。怒りや憎しみに突き動かされ、それが正義だと信じて人をののしることのほうがどれほど楽だろう。

 だが、それはしょせん、地獄へと続く道である。叶うことなら、ぼくたちも物語のように「愛の進化」を選びたいものだが――それは、はたして可能なのだろうか? ぼくには途方もないことであるように思えてならない。

 とにかく、『プラネット・ウィズ』は面白い作品だった。次回、最終回でどのような結論が出されるのか、とても気になる。

 そして、ぼくたち現実世界の人間が、物語と同じ結論を選び取るだけの知性と冷静さを維持できるかどうかもまた、気になってしかたないところだ。

 そこに愛はあるのだろうか。

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