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水上悟志原作のアニメ『プラネット・ウィズ』がSFで面白い!

 水上悟志が原作をゼロから書き上げたことで(一部で)話題になった『プラネット・ウィズ』がここに来て面白いです。

 序盤は何が何やらという感じだったのだけれど、第8話、第9話、第10話と格段に盛り上がって来ている。

 驚くほど正当なサイエンス・フィクションで、いまどきめずらしい骨太の物語を繰り広げてくれています。

 水上さんは『惑星のさみだれ』、『スピリット・サークル』と安定して骨太の傑作を送り出してきているから期待していたのだけれど、その期待にみごとに応えてくれた感じ。

 いやー、素晴らしい。まだ見ていない方にはオススメです。

 ちなみに、物語が大きく動くのは第8話で、ここで主人公の少年が人類を守るための戦いを放棄してしまうのですね。

 ここら辺はあきらかに『エヴァンゲリオン』の文脈なのですが、それでは、少年が戦うことを投げ出したとき、まわりの大人はどうするのかというテーマが生まれることになる。

 非常にスリリングな展開です。そこにさらにマクロなSF展開が絡んでくる。

 あまりくわしく書くと過度のネタバレになってしまいますが、「サイキック」力をもち、進化を始めた人類ははたして封印されるべきなのか、否か? 犬の着ぐるみを思わせる異星人と猫の着ぐるみを思わせる異星人のあいだで壮絶な議論と戦いが繰り広げられます。

 で、この異星人たちの名前が「カレルレンとラシャヴェラク」! わかる人にはわかる通り、これはアーサー・C・クラークの古典名作『幼年期の終り』に登場する異星人オーバーロードの名前なんですね。

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))

 「愛の進化種族」を名のる異星人たちは宇宙を管理するオーバーロードだったわけです。『幼年期の終り』は発表から70年くらい経っているわけですが、いま読んでも感動的な大傑作です。そこに絡めてくるあたり、さすがだと思いますね。

 何十年経ってもインパクトがある『幼年期の終り』も凄いわけだけれど、これはまあ、そういうものなのかもしれない。

 そもそも、SFとか本格ミステリなどの最先端の超絶アイディアは、凄いといえば凄いものだとは思うのですが、それ自体はなかなか一般的なエンターテインメントにはなりません。一部のマニアが凄い、凄いと騒いで終わってしまうものなのですね。

 そういう発想がハリウッドとかのエンターテインメントに下りてくるのは、発表から何十年も経った後だったりする。

 だから、すでにSFとしては大古典にあたる『幼年期の終り』のアイディアがいまになって利用されていることも、それほど意外なことではないのかもしれません。

 たとえばイーガンの『ディアスポラ』みたいな限界的な発想をエンターテインメントとして展開できるようになるまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。

 ちなみに、この『幼年期の終り』、海外より日本のほうが評価が高いようです。神なるものとの対峙みたいな宗教的なテーマは、案外、日本人のほうがびびっと来たりするのかなあ。

 キリスト教徒が『幼年期の終り』をどう受け止めているかはちょっとわからないけれど……。

 まあ、そういうわけで、『プラネット・ウィズ』、いろいろな意味で楽しめる作品です。

 第10話の時点で主人公たちの葛藤にはとりあえずの決着がついちゃっているのだけれど、この先、どうなるんだろ。

 順調に行くとラスボスである「龍」をやっつけて終わりということになると思うのだけれど、はたしてそういうシンプルな結末になるかどうか、注目したいところです。

 水上さんの作品はどれも「成熟」ということがひとつのテーマになっていて、ごくまっとうに「大人になること」を志向している印象があります。

 それが「人類の進化」という巨視的なテーマと絡み合って、どのような結末を生み出すのか。のこりの何話かが楽しみでなりません。

 やっぱりSFは良いよなあ。でも、こういうマクロスケールのSFは最近ではなかなか一般的エンターテインメントの次元では見かけなくなってきていますよね。

 やっぱり最先端のアイディアとかテーマがあまりにもとんがりすぎていて、それを娯楽作品としてこなれた形に落とし込むことはむずかしいのだと思う。

 たとえばVRを描くにしても、一般的には『サマー・ウォーズ』とか『レディ・プレイヤー1』みたいなレベルがリミットっぽいですよね。

 『順列都市』とか『ディアスポラ』みたいなアイディアは、まだ世間的には受け入れられるものではないのでしょう。

 SFは現実の何歩か先を想像することができるわけですが、あまりに現実からかけ離れてしまうとそれはそれで世間に広く受け入れられるものではなくなってしまうのでしょうね。

 ここをうまく処理した『ソードアート・オンライン』の、特に「アリシゼーション」編はまさに大傑作だと思います。まだ続くんだよね、『ソードアート・オンライン』。あの人も恐ろしい才能だなあ。

ソードアート・オンライン (9) アリシゼーション・ビギニング (電撃文庫)

 というあたりでオチもなく終わります。では、では。

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