マンガ

竹内良輔&三好輝『憂国のモリアーティ』が面白い!

 『ジャンプスクウェア』で新連載が始まった 『憂国のモリアーティ』が面白いです。

 「憂国のモリアーティ」。もう、このタイトルだけで傑作に違いないと確信できるわけなのですが、そうです、あの「犯罪界のナポレオン」モリアーティ教授を主人公にした物語なのです。

 といっても、もしかしたら知らない人もいるかもしれないので一応説明しておくと、ジェームズ・モリアーティはコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズで、シャーロックをいったん死に追い込む最大のライバル。「犯罪界のナポレオン」の異名を持ち、ロンドンの闇を支配している大物です。

 物語は、いきなり、モリアーティとホームズの対決の最終局面である「ライヘンバッハの滝」のシーンから幕を開けます。

 もう、シャーロッキアンにとっては堪らないであろうオープニングですね。この時点ですでに素晴らしいわけですが、その後、時間をさかのぼって少年時代のモリアーティを描いていきます。

 平民に生まれて貴族に拾われ、奴隷のように使役される少年。かれはいかにして「ナポレオン」と呼ばれるまでになったのか? もう、興味が止まりません。

 いやー、これは素晴らしい。ひさびさに続きの展開が楽しみでならない漫画が現れてくれました。

 『ジャンプスクウェア』は『1/11 じゅういちぶんのいち』の作者が描いている『伝説の勇者の婚活』とかも連載されていて、いま、ぼく的に注目度が高いですね。この漫画の話もいずれしたいのですが、とりあえずは『憂国のモリアーティ』のこと。

 シャーロック・ホームズシリーズは世界でいちばん二次創作(パスティーシュと呼ばれる)が作られている小説で、そのなかには傑作もあり、山田風太郎の「黄色い下宿人」なんかはある意味、ドイルの作品以上のクオリティなのですが、モリアーティを主人公にした作品は過去にあったのかな?

 まあ、シャーロック・ホームズもののパスティーシュは実に幅広く、ミステリからSF、女体化から同性愛まで、実にあらゆるパターンの物語が試みられているので、たぶんあるのでしょう。ただ、ぼくは知りません。

 いずれにしろ、モリアーティのほうを主人公にして19世紀ロンドンの物語を描こうというのは実に秀逸なアイディアだと思います。

 ある意味、「主人公」を敵にまわしてしまっているという敗北が運命づけられているキャラクターであるわけで、これからかれがいかに戦い、いかに敗れていくのか、先が気になって仕方ありません。

 いわゆる「悪人」を主人公にしたピカレスク・ロマンでもあるし、この先、モリアーティとホームズの熾烈な頭脳戦が始まるのだろうから、ある種、『DEATH NOTE』っぽさを感じさせるところがなくもありませんが、モリアーティは夜神月よりはるかに好感が持てる人柄なので、なるべく頑張ってほしいものです。

 第1話を読む限り、かれはどうやらこれから「大英帝国の身分制度というシステム」に戦いを挑んでいくことになるらしいのですが、いったいこの先、どんな展開が待ち受けているのか、そしてどの時点でホームズと対決することになるのか、もう、わくわくしてたまりません。早くホームズとワトスンが出て来ないかな。楽しみ、楽しみ。

 歴史上の実在する人物だとか、ホームズシリーズのほかのキャラクターを出していくという手もありですねえ。まだ単行本にもなっていませんが、とりあえずオススメです。

 ちょっとトリビア的に書いておくと、ジェームズ・モリアーティというキャラクターは、本来、シャーロック・ホームズものの新作を書くことにうんざりしていたドイルが、ホームズを始末するためご都合主義的な生み出したキャラクターであるに過ぎず、そんなに大したバックグラウンドは持っていません。

 ホームズものの60作に及ぶ「正典」のなかで、モリアーティが登場するのは3作に過ぎないといいます。

 ただ、3作で終わらせてしまうにはあまりにも惜しいキャラクターであることも間違いないので、その後の映画や舞台劇などではくり返し登場してホームズと虚々実々の対決をくりひろげているようです。

 最近、19世紀ロンドンを現代に置き換えてホームズを描いて話題になった(そして超面白い)ドラマ『シャーロック』にもモリアーティは登場していますね。

 作中でホームズに匹敵する頭脳をもつ唯一の悪役であること、一匹狼の名探偵ホームズに対して、組織力をもった大物であることなど、モリアーティの魅力は色々ありますが、『憂国のモリアーティ』が今後、どのようにこの人物を描いていくのか気になるところです。

 物語はいかにして、冒頭の「ライヘンバッハの滝」に続いていくのか、そしてそこで終わるのか、どうか。いやー、ほんと楽しみな作品なので、どうか打ち切られたりすることなく連載が続くことを祈るのみです。

 でも、これは大丈夫だろ。面白いもん。またひとつ先が楽しみな漫画と出逢ってしまいました。ああ、幸せ。

ピックアップ記事

  1. キズナアイとちびくろサンボは「差別的なステレオタイプ」なのか。
  2. 正義か、差別か。児童性愛者の人権を認めるべきか考える。
  3. 相田裕の青春恋愛群像劇『1518! イチゴ―イチハチ!』レビュー。
  4. メタエロゲの傑作『らくえん』を語る。
  5. 永野護、宮崎駿、虚淵玄の世界を比較鑑賞する。

関連記事

  1. マンガ

    きづきあきら&サトウナンキ『奈落の羊』の暗闇。

     物語は暗やみから始まる。 都市の片隅の暗がりでからだを売る女と、…

  2. マンガ

    『グラゼニ』感想。「才能をお金に変える努力は正しい。」

     プロ野球漫画『グラゼニ』でメジャーリーグが視野に入って来ました。面白…

  3. マンガ

    萌えは贅肉の産物? 永野護のファティマはなぜ「萌えない」のか。

     小林立『咲』を第4巻まで読んだ。ぼくは麻雀を知らないので具体的にどう…

  4. マンガ

    嫉妬は成長を阻害する。『GIANT KILLING』に学ぶ自分を高める競争のしかた。

     いやあ、『GIANT KILLING』おもしろいですねー。今週号の『…

  5. ゲーム

    庵野秀明のオリジナル幻想と奈須きのこの偽物論。

     『ファイブスター物語』の第14巻が出ました。今回は魔導大戦序盤のベラ…

  6. マンガ

    結局、『ドラゴンボール』の面白さは色あせたのか?

    【読む前から決めつけないほうがいい。】 「『ドラゴンボール』を…

おすすめ記事

ピックアップ記事

アーカイブ

PAGE TOP