マンガ

竹本泉は天才だ! 猫好き必読の『ねこめ(~わく)』を読もう。

 竹本泉『ねこめ(~わく)』を3冊ほど続けて読みました。

 このシリーズ、第8巻まで続いた『ねこめ~わく』の続編にあたるのですが、続編とはいっても何も違いはありません。ええ、そのまま。まさにそのままです。

 そもそもこの漫画の新作を読むの20年ぶりくらいなのだけれど、何ひとつ変わっていないなあ。

 連載はすでにあっちこっちの雑誌で25年も続いているそうで、竹本さんの漫画のなかでも最も長く続いている作品ですね。

 四半世紀経ってもまったく変化がないというのがすごい。普通、こうやって長く続いていると経年劣化が起こるものなのだけれど、クオリティが全然下がっていない。

 いやー、こんな漫画は稀有だろうなあ。なにげに竹本さん、天才なんじゃないかと思うんですけれど、どうでしょう。

 ぼくの天才の定義は「独創の人」ということになるのですが、竹本泉みたいな漫画家ってほかにいないものね。

 最初期の『ちょっとコマーシャル』とかからいまに至るまで、「何考えていたらこんな変な発想が出て来るんだ?」という漫画ばかり描いている人なのですが、いや、ほんと、オリジナリティあるよね。

 『アップルパラダイス』の隕石が降ってくる話とか、初めて読んでから何十年も経つけれど、いまだに忘れられない。あれはすごかった。

 それにしても、昔は初期の単行本を探すのは大変だったのですが、いまは電子書籍で簡単に入手できます。実にいい時代になったものです。すばら。

 えーと、『ねこめ(~わく)』の話です。

 この漫画、人間によって進化させられた猫たちがなぜかどこかへ行ってしまった人間たちの文化をひき継いで生活しているという内容なのですが、そこに現代(並行世界)の女子高生が召喚されてしまうところが独創的。

 いや召喚て。魔法じゃん。SFみたいな話なのに平気で魔法が混ざってしまうあたりが余人の追随を許さないところだよなあ。

 いまどきの若い者は知らないじゃろう古いSFに「ホーカ・シリーズ」というのがあるのですが、それがテディベアそっくりの宇宙人たちが人間のマネをしまくるというお話でした。

 『ねこめーわく』はそれを猫にしているわけで、まあ、前例があるといえばあるアイディアなのだけれど、平然と女子高生が召喚されるあたりがやっぱりひと味違うと思うのです。

 で、その召喚された女子高生の百合子は宇宙からウラシマ効果で何千年の時を超えて帰ってきたヘンリヒと仲良くしたり喧嘩したりしながら猫たちが起こす騒動のほかは特別すごいことは起こらない平穏な日々を過ごすのです。

 まあ、それだけといえばそれだけの漫画。でも、これが面白いんですよね。

 猫たちが人間の文明を見様見真似で模倣してトラブルを起こしつづけるさまは、クラシックなSFの面白さといえないこともないだろうけれど、やっぱり竹本泉独特の世界。

 すごいよなー、ほかに似ている作家を思いつかないもん。ほのぼの二足歩行猫SFなんてジャンル、この漫画だけでしょう。

 ぼくは昔からこの竹本泉という人を大変高く評価していまして、ほんとうにすごい才能のもち主だと思うのですよ。

 本人はいまでも少女漫画家のつもりでいるようだけれど、ジャンルとかカテゴリにあてはめることができないタイプの作家でしょう。

 どの漫画を読んでも「うーん。うじゃうじゃ」とかいって、わけのわからない奇想を展開しているのだけれど、それがほのぼのとした雰囲気とマッチしてほかに類例のない世界を作っているあたりが才能だと思います。

 『さよりなパラレル』とか、好きだったなあ。ええ、それも20年前の話ですが。でも、いまでも好きです。ぼくはいったん好きになったものを好きじゃなくなることはない人なので。

 あと、『あおいちゃんパニック!』は当然として、『しましま曜日』とかね。「服に着られて性格が変わっちゃう女の子」という、ほんとうによくわからない発想の漫画なのですが、めちゃくちゃ素晴らしいラブコメでした。

 まだ「萌え」という言葉もない頃から、それっぽい可愛い女の子たちをたくさん描いてきたところもすごい。

 先駆的というか、オーパーツ的というか、昔の作品が現代でも十分に、あるいはそれ以上に通用してしまうというとんでもない才能の人なのです。

 この人の漫画は古びないんだよね。だって、時代とあんまり関係なく自分の思い付きだけで描いているとしか思えないから。

 いや、そのくせ、「百合とか流行っているから」といって百合漫画を描いたりもするのだけれど。

 いずれにしろこういうベテラン作家さんが年に何冊か定期的に新刊を出しつづけてくれているということは嬉しいことです。

 作家生活もいいかげん長くなったと思うのですが、その作風に微塵も変化が見られないのは、最初から完成しているスタイルのもち主だったからなのでしょう。

 世の中にはこういう人もいるのだなあ。ある種の才能としかいいようがない。そうとしか説明がつかない。

 まあ、大変ほのぼのとするので、読まれてみるといいかと。うーん。うじゃうじゃ。

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