アニメ

アニメ『響け! ユーフォニアム』感想。「時代を映す鏡」。

 ペトロニウスさんが『響け! ユーフォニアム』の記事を上げていますね。

http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20150807/p1

 で、ぼく、これを読んでびっくりしたのだけれど、『ユーフォ』のキャラクターデザインって、『青春しょんぼりクラブ』の作者さんなんですね……。

 いやー、いまさら何をいっているんだお前はといわれるかもしれないけれど、ぼくのなかでこのふたつの名前は結びついていなかった。

 アサダニッキってどこかで聞いた名前だとは思っていたんだけれども。

 予想外のところで色々関係が繋がっているものだなあ、とあらためて感嘆。

 いや、ぼくの予想が貧弱なだけかもしれませんが、それにしてもね。

 ぼくはそんなにアニメを見る人ではないのですが、『ユーフォ』は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているのだろうか』と並んで、ここ最近見たもののなかでは収穫といえる秀作だと思います。

 何か異常な熱気があるというわけではないかもしれないけれど、とにかくていねいに脚本が組まれていて、作画も綺麗にまとまっている。

 『けいおん!』以降の青春ものアニメとして、最高の作品といっていいのではないでしょうか?

 青春の光と闇、栄光と挫折を、非常に美しく描いているように思えます。

 ひと言でいうと「やる気のない人間がやる気を出すまでのお話」なので、気に食わない人もいることでしょう。

 しかし、どこまでも続く永遠の日常もさすがに苦しく思えて来ている昨今、その突破を目ざす作例のひとつとして本作は記憶されてもいいと思います。

 なんといっても、圧倒的に出来がいい。

 コメディにも依らずシリアスにも依らず、しかし全体的にはきわめて感動的に演出された物語は、まさに「さすが京都アニメーション!」といいたくなるクオリティです。

 特に後半の盛り上がりは素晴らしく、パーフェクトではないにしても、限りなくそれに近い作品といってもいいでしょう。

 しかし――そこにひとつだけ瑕疵があるように見えることもたしか。

 これは以前、友人たちと話をした時もその話題になったことですが、ほとんど完璧に組まれているように見えるこの物語の唯一といっていい問題点が滝先生の描写だと思うんですよ。

 かれがどういう動機でもって吹奏楽部の生徒たちを指導しようとしていて、それにどこまでの正当性があるのか、その点がいまひとつあきらかになっていない。

 もちろん、かれ個人の内面では正当性がある話なのだろうけれど、客観的に見ればそうでもないわけで、その問題点が突き詰められずに終わっているところが隔靴掻痒の印象を残す。

 当然、制作スタッフはその点に気付かなかったわけではなく、検討の結果、そこは描かないと決めたのだと思います。

 あるいは小説版の続きでは何かしら描写があるのかもしれませんね。

 それはわかりませんが、とにかくこのアニメ版では滝先生の扇動教育はほとんど奇跡的にうまく行って結果を出しているように見えます。

 ここで、「しかし、現実にはそううまくは行かないだろう」と思ってしまった視聴者は多いのではないでしょうか。

 というのも、かれは受験勉強という学生として最も正当と見られるミッションを抱えた生徒たちに「勉強ではなく部活に力を注ぎなさい」といっているわけで、その時点で教師としての正当性がない行動であるということもできるわけなのです。

 もちろん、かれはべつに勉強に手を抜けといっているわけではない、すべては本人の自由に任せるとか語っているわけなのですが、それにしても実質的には過酷な練習を強いているといってもいいはずで、ほんとうならもっと大きな反発が起こってもおかしくないところでしょう。

 ところが、この物語のなかではそういった抵抗の描写はほとんどなく、ある種、牧歌的な描きで進んで行きます。

 それはあきらかに意図的に削除されている以上、作品の欠点とはいえないにせよ、そこに疑問を感じる視聴者は一定数いるはずです。

 もっとも、ペトロニウスさんが書いているように、そこに触れてしまうと全体の構成がおかしくなる、だから触れないほうが良いのだ、ということもいえるでしょうが、それにしたって、ほかの点がとてもきれいにできているだけにどうにも気になるという意見もわかるのです。

 ただ、ぼくとしてはこれはこれでいいんじゃないかな、と思うんですよね。

 どういえばいいのか、生徒たちの「先生の意図を見抜いた上で「あえて」それに乗ってやる」という態度に一定のリアリティを感じるからです。

 ぐうたらしている生徒たちにしても、ほんとうは熱く燃えられるきっかけを求めている一面はあると思うのです。

 でも、自分たちだけではその発火点にまで到達することができない。

 だから、滝先生の扇動に乗るという形が必要だった、ということなのではないかと。

 というか、こういうふうに考えると、ぼくとしては非常に納得がいく。

 退屈な日常に身をひたすのもそれはそれで辛いわけで、熱血系の欲求というものはいまの時代にもそれなりにあると思うのですよ。

 でも、自分自身のなかにベタに熱血する動機は見つけられない。だから、だれかに炊きつけてほしい。そういうことなんじゃないかと。

 そう考えると、非常に複雑に倒錯した動機の物語といえそうですが、ぼくはだいたいそんなふうに捉えています。

 未来が閉ざされているようにも思える現代社会でしゃにむにがんばる動機を見つけることはほんとうにむずかしいのですね。

 『ユーフォ』もまた、そういう時代を象徴する作品のひとつだと思うのでした。

 面白いですね。

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