アニメ

『響け! ユーフォニアム』で「あずにゃん問題」を再考する。

 今季の新作アニメを粛々と消化しています。

 今季の目玉はやはり『アルスラーン戦記』あたりかと思いますが、そのほかにも注目作は多いですね。

 そのひとつが『響け! ユーフォニアム』。

 武田綾乃による小説を京都アニメーションが映像化した一作です。

 京アニの音楽ものということで、どうしても『けいおん!』を連想させられるのですが、それとはまたひと味違う雰囲気の一作に仕上がっています。

 非常に王道の青春ものという印象を受けますね。

 『けいおん!』は音楽ものとはいっても、じっさいにはぬくぬくとした仲間空間の心地よさを描くことに主眼がありました。

 しかし、『響け! ユーフォニアム』は何らかの「競争」を描くことになるのではないかと思います。

 ただ仲良くしているだけではいけないような何らかの競争原理が働く世界なのではないかと。

 どこまでシリアスな話になるかは未知数ですが、京アニの新境地を期待したいところです。

 ところで、この作品を見ていると『けいおん!』放送当時の議論(?)を思い出します。

 その頃、「あずにゃん問題」(笑)という問題提起がぼくたちの間であって、つまり「中野梓(あずにゃん)は軽音部のあのぬるい空気のなかで堕落していってしまっていいのか?」という話だったんですね。

 努力すれば光るかもしれない才能を持っているのに、それを微温な仲良し空間で腐らせてしまっても良いものなのか、と。

 もちろん、明確なアンサーが出る話ではありませんが、この問題をぼくはずーっと抱え込んで考えているのです。

 ペトロニウスさんは「日常をたゆたい「いまこの時の幸せをかみしめる」か、それとも志と夢を持ってつらく茨の道をかけのぼるか?」と書いていますが、つまりは「成熟か、成長か」という問題であるのだと思います。

 ひととして成熟し幸福になればなるほど、そのすべてを捨ててさらなる成長の試練に挑もうというモチベーションは薄くなる、ということ。

 ぼくは昔、「部活漫画には二種類ある。」という記事を書いたことがあります。

 でも、ま、部活ものにも二種類あって、ひとつは、『SLAM DUNK』みたいな、『アイシールド21』みたいな、集団のモチベーションがはっきりしているタイプ、「全国制覇めざすぜ!」系。もうひとつは、『放課後ウィンドオーケストラ』のような、『とめはねっ!』のような、特に大きなモチベーションが存在しないタイプ、「まったり皆で楽しもうぜ!」系。そのいずれが正しくいずれが誤っているというものではありませんが、とにかく大別するとこの二種類に分けられるんじゃないかと。

 ぼくは前者を「きつい部活もの」、後者を「ゆるい部活もの」と呼んでいます。ぼくは見ていないけれど、『けいおん!』はたぶん「ゆるい部活もの」なんでしょうね。もちろん、この二者は明確に分かたれているわけではなくて、じっさいにはグラデーションを描いていると思います。で、ペトロニウスさんは良く「ゆるい部活もの」は物足りない、みたいなことを仰いますよね。それもわかる話で、過酷な競争社会でもまれているひとにとっては、そういうモチベーションの低い仲良し集団ものは、いかにも甘ったるく思えてもふしぎじゃない。でも、逆にいうと、こういう「ゆるい部活もの」の価値は、その物足りなく感じもするところにあるのであって、その何ともいえないゆるさ、優しい癒しの空間こそが魅力であるわけです。

http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090617/p1

 『放課後ウィンドオーケストラ』もまったり楽しむだけの話とはいえないようですし、その後、『とめはねっ!』はわりと実力勝負の方向性に行った模様ですが、その話はこの記事の趣旨ではありません。

 部活もの漫画には「成長(目ざせ、全国優勝!)」を目ざす路線と「成熟(微温で幸福な学生生活)」を志す路線があるというところが大切です。

 で、それこそ『けいおん!』が象徴しているように、このところ、わりと成熟路線の作品がアニメでは目立っていた印象があります。

 もちろん、『少年ジャンプ』などではあいかわらず成長路線の作品が数多く生まれているのですが、それはまたちょっと違う文脈の話。

 ここに来て『響け! ユーフォニアム』が成長路線を選ぶということならこれは面白いです。

 これもペトロニウスさんとよく話すのですが、成熟を究めてしまって「ただの現実」へと着地したかに見える日常ものは、案外、次には「王道」に回帰していくのではないか?という考えがあります。

 もしそうだとしたら、『響け! ユーフォニアム』は「王道の成長路線」を描く作品になるのかもしれない。

 ただ、それは古典的な王道というより、一周まわって「ライフスタイルの多様性」を内包した、新しい王道ものになるんじゃないかな。と、これはいささか強引な話ですね……。

 まあ、そういうことを考えながら見て行くとなかなか面白いものがあります。さて、現実はどうなるのか? 物語の進展に期待です。

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