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秋★枝『煩悩寺』レビュー。「あまあまラブコメの秀作」。

 秋★枝『煩悩寺』全三巻を読了しました。いやー、最近あんまり読んだ記憶がない良質のあまあまラブコメディで、これは実にすばらしいですね!

 最初から最後まで、波瀾万丈の「は」の字もない、平穏無類な、それでいて愉快痛快な恋愛物語でありました。

 特に主人公たちが正式に結ばれる第二巻から後は、あまあまあまあまあまあまあまあまーい、ディオでも口を噛むんじゃないかと思うほどの展開で、それはまあ、読んでいて楽しいです。

 リア充爆発しろ!というあの言葉にどれほどの意味があるのかはともかく、たしかにこいつらは爆発して四散して宇宙のチリとなったほうが良い気がする。それくらい幸せそう。

 タイトルの「煩悩寺」とは、カオスなものがたくさん置かれた主人公の部屋のことを指します。その煩悩寺を舞台に、ボーイとガールというにはいささか歳をとりすぎたふたりが少しずつ近寄っていて、らぶらぶな関係になるまでと、なってからを丹念に描いたのがこの物語です。

 うん、まったくドラマティックでないから、書くことがないですね。いや、いい漫画なんですけれど。少なくともぼくは最近ちょっと思いつかないくらい幸せな読後感でした。

 この秋★枝さんという作家さんのことを、ぼくはいままでほとんど知りませんでした。だって、掲載誌が『コミックフラッパー』とかなんだもん。メジャーな雑誌はだいたい追いかけているけれど、『フラッパー』はちょっときつい。

 しかし、絵が可愛いという、くだらないといえなくもない理由で読んでみたら、これが何と大あたり。超ぼく好みの内容でした。

 ふだん恋愛漫画なんてそうそう読んでいませんが、でも、たまに読むといいものですね。ぼく自身が恋愛から遠いわくわく非モテ独身ライフを送っているんだけれど、恋愛分をフィクションで摂取することは好きです。

 現実の恋愛ではなかなか味わえない妙味をたくさん味わうことができますからね! ま、いいかげん非モテ非モテいっているのも辛いお年ごろではあるのですが……。

 いや、ぼくの悲惨な身の上話はどうでもよろしい。とにかく秋★枝さんの話。恋愛漫画にも、比較的現実的に、切ない内容を綴ったものもあれば、こういう恋愛の多幸感にフォーカスしたものもあるわけですが、ぼくはどちらかといえば後者が好きです。

 ただ、それが完全な萌え漫画になってしまうと、あまりに現実離れしているから、少し好みからずれる気がする。あくまでリアリティを失わない範疇で、らぶらぶしたりえろえろしたりしているものが好みですねー。

 最近、雑誌『楽園』とかで連載されている漫画なんかは好みのものが多いようです。あまりチェックしていないのですが、そろそろチェックしてみようかな、と思っています。

 もちろん、なかなかマーベラスな作品には出会えないのが現実なのですが、それでも探求はあきらめないのだ! そうすると、時にはこの『煩悩寺』のような、すばらしい発見に巡り会えることもあるわけです。

 もちろん、知っているひとはすでに知っている作品なのだろうけれど、ぼくは知らなかったので、ぼくにとってはこれは「発見」なのです。

 いやー、幸せだった。まあ、男性読者がほとんどだろうけれど、女性が読んでもそんなにいやな気もちにならない作品なんじゃないかな? ぼくとしては花丸付きのオススメ作品なので、恋愛漫画が好きなひとは読んでみてくださいまし。

 他人が幸せなところを見るとアレルギーが発症して死にそうになるという向きにはまったく推薦できませんが――。

 いや、ほんと、何なのでしょう、この、ひとが幸せそうにしているところを見ると自分も幸せになる感覚は。「ほっこりする」という言葉がありますが、まさにそういう感じ。心の底からほっこりする気もちが湧いてきます。

 主人公ふたりの初エッチシーンの、初々しいこと! 大人になるとセックスひとつするにも色々な事情が絡んで素直に楽しむことができないと書かれていますが、それはその通りなのかもしれない(ぼくは知らんが)。

 でも、そういう事情を乗り越えて、人生を楽しむふたりに拍手を、喝采を! 物語は全三巻で完結していますが、おそらくそのあともふたりはおもしろ楽しい人生を送ったことでしょう。

 些細な偶然から出会い、結ばれたふたり。現実にはなかなかありえない出会いだとは思いますが、いや、あこがれますねー。恋を知らない少女のように。

 かれらの運命を操って、この一編の楽しい物語を仕上げた作者にも拍手を。何も起こらないことでは『ふたりエッチ』にも劣らない作品ですが、ぼくとしてはこんなに楽しい読書体験はほかにありません。

 LOVEこそすべてだとはまったく思わないけれど、そう錯覚できる時があるということは幸福なことです。秋★枝さんのほかの作品もひと通り注文してあるので、これから読んでみます!

 というわけで、秀作です。ぜひ、読んでもらえると、ぼくとしては嬉しく思うのでした、とさ。

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