マンガ

嫉妬は成長を阻害する。『GIANT KILLING』に学ぶ自分を高める競争のしかた。

 いやあ、『GIANT KILLING』おもしろいですねー。今週号の『モーニング』ではとうとう椿大介が代表デビューしました。

 好不調の並が激しい天才肌のプレイヤーである椿が代表チームでいかに自分を表現していくか、次回が楽しみな展開となっています。

 それにしても、最近のスポーツ漫画は『ベイビーステップ』や『capeta』などもそうですが、ただおもしろく読むだけで自然と「ひととしての生き方」「正しく自分を高めていく作法」「競争社会でサバイバルするやり方」などを学べるものに仕上がっていますね。

 そこで今日は「嫉妬は成長を阻害する。『GIANT KILLING』に学ぶ正しく自分を高める競争。」と題して、この漫画から競争原理のなかで自己を向上させていくやり方を学び取ろう思います。

 たかが漫画と笑うことなかれ。連載漫画には、その漫画家自身が苛烈な連載競争のなかでサバイバルしながら得た教訓などが組み込まれているはずです。

 したがって、その教訓を知ることは今後加速度的に激しさを増していくであろう競争のなかで生き抜くすべを学ぶことに通じているはず。

 「たかが漫画」というひとはただ漫画を見る目を持っていないだけなのです。ぼくはそう思う。

 さて、『GIANT KILLING』第18巻では、主人公達海率いるチームETU(イースト・トーキョー・ユナイテッド)のキャンプを経た後半戦の試合の様子が描かれています。

 そのなかで、新規加入選手たちを加えて激化する競争に怯んだ様子を見せる選手たちに向かって、達海はいいます。

「いいか よく聞けよ ライバルや周りの選手が上手くなることを恐れるな むしろ歓迎しろ お前達には 人一倍負けず嫌いの精神があることを俺は知ってる そしてキャンプを経て自信もついたはずだ 各々このチームで戦っていくための武器はわかってきてるだろ? 周りのレベルが上がってきたとしたって伸び盛りのお前達なら大丈夫だよ お前達ならおのずと…… 自分の武器を磨こうと必死になれる わかるだろ? 仲間が上達して自分の立場が脅かされることと 自分の実力が向上することは直結してんだ すなわちこれは チャンスなんだよ」

 「競争の激化は自分を高めるためのチャンス」。

 一見すると型通りの「ポジティヴ・シンキング」型メッセージとも受け取れますが、しかし、この言葉には真理があります。

 わかりやすくいうなら「他人の失敗を願っているかぎり、ひとは力強く成長することはできない」ということです。

 「嫉妬は成長を阻害する」とはそういうこと。否、正確には、嫉妬することそのものはいいのですが、正しく嫉妬しなければならないということです。

 正しく嫉妬するとはどういうことか。それはつまり、相手を妬んでひきずり降ろそうとするのではなく、相手に追いつかれないよう自分を向上させることに力を尽くすということです。

 「競争を勝ち抜くこと」はそれ自体が目的なのではなく、あくまで、自分を高めるためのひとつの手段、そう認識するべきでしょう。

 どんな手段を使っても勝てばいいという考えのもち主は、すぐに壁にぶちあたります。何度も述べている通り、正しく成長するためには正しい筋道をたどっていかなければならないものなのです。

 『GIANT KILLING』では、ライバルチームとの地力の差を思い知らされたある選手が「もっと死に物狂いにならなきゃならないんじゃないか?」と悩む場面があります。

 しかし、努力とは、死に物狂いになったところですぐに結果が付いてくるというものではない。あくまで正しいやり方にこだわる必要があります。

 「競争のなかに自分を置くこと」も、もちろんその正しいやり方のひとつではある。

 しかし、競争の勝ち抜きそのものにこだわるあまり、自分を高めることを怠るようになったら、その競争はかえって成長を邪魔することになりかねません。達海の言葉にはそういう真意も含まれているのでしょう。

 「ライバルは自分を高めてくれる」「競争があって初めて成長していくことができる」と認識するならば、競争相手は「敵」ではありません。

 むしろ自分を高めるために意味がある重要な存在であるといえます。そういうライバルをどれくらい持つことができるかは、ゲームプレイヤーにとってきわめて思い意味を持っているはずです。

 世の中には、逆境にあって生き生きとし始めるひとたちがいます。そういうひとたちは一般に「メンタルが強い」と称されることになるわけですが、実は考え方の違いがその裏にあるのかもしれません。

 逆境や競争を「チャンス」として捉えているかぎり、ひとはそういったものにそう簡単には押しつぶされません。逆に「どうしても勝ち抜かなくては」と心を固くしてしまうと、かえって失敗することになりかねない。すべては心の持ちようひとつ。

 まあ、その心のコントロールがいちばんむずかしいわけですが、しかしそこの考え方を操作できるひとはそうでないひとより早く成長していくことができるでしょう。

 それは決してただ楽観的にものごとを捉えるというだけのことではなく、むしろ失敗する可能性、競争に敗北する可能性を直視した上でそれを肯定的に受け止める思考法なのです。

 「そうまでして成長しなければならないのか?」と考えるひともいるかもしれません。もちろん、現状に満足しているひとはそれでいい。

 ですが、いまよりもっと高くへ、と望んでいるひとがしてはいけないことのひとつはひとの失敗を望むことだということは憶えておいていいでしょう。

 ライバルが転んだからといってあなたが速くなったわけではない。ひとはときに、このあまりに自明な事実を忘れ去ってしまうものなのです。ぼくも気を付けようっと。

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